緑によせて

緑の美しい季節になりました。これから夏にかけてが木々や草花にとっても最も楽しい季節なのでしょうか。それぞれの木が嬉しそうに風にざわめいているのを見上げると、その姿が子供たちの姿に重なっていきます。

小学生から中学生にかけての子供たちは、ちょうど春から初夏にかけての樹木によく似ています。精いっぱい枝を張り、葉を広げ、伸びていく喜びに満ちています。一枚一枚の葉に、誇らしげに陽光を反射させながら、歌い、ざわめいています。生命が本来持っている生きる喜びの形です。

子供たちが伸ばした小枝の先の先まで、葉の一枚一枚まで、ずっと見ていてあげたい。やがて大きな、あるいはささやかな実を結んでも、その実だけを見るのではなく、いつも木全体を見ていたいと思うのです。地中に埋まって見えはしないけれども、その木の根っこにまで思いをめぐらせていたいと思うのです。埋まって見えない根っここそは、私たち親自身の心でもあるのですから。朽ちて落ちた葉も全てその木の再生のために必要な命の素です。本当はこのことが一番大切な事なのかも知れません。

明るい太陽の下で、若葉に覆われた木々を見ていて、その木の一年を、一生を思いました。